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01-b Epilogue |
“不完全”
(完成させるための作品)
無知の知を自覚して以来,日に日に変化していく自分がそこにいる。 人間とは不完全なものである。 それを満たすために反動のようにひたすら追い求める。 そして,目の前の作品はそのたびに陳腐なものに見えてくる。 「これじゃ,いくら時間があっても終わりはない」‥そこに満足は訪れない。 終いには,原型すらそこに留めてないだろう。 それが,成長というものならしかたがない。 我々の体自体,昨日の自分でないように変化し入れ代わる。 気づかないのは,その流れが緩やかなお陰だろう。 しかし,困ったことに頭のほうはそうはいかない。 穏やかどころか不連続を連続的に,より高速に情報は流れていく。 そんな両方が相俟って,体と頭のバランスが崩れてくる。 正しくは,順応期間ともいえるこの時代。 もはや,成長を止めるのが死をもってするしかないならば,作品を完成させるには“タイトル”に頼るしかない。 人生に満足はない。完全はない。 だからこそ人間という生き物は先へ進むことができるのだろう。 [Epilogue]より |
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